研究概要 |
近年我々の研究によって地球自由振動が常時揺れていることが明らかとなってきた.その励起源として小林(申請者)が1996年に提唱した大気擾乱起源説が有力なものと考えられている.そこで大気励起起源説を確固たるものとするため,理論的解析的な研究を進めた.大気擾乱による固体地球振動の励起の実証的裏付けが確実になれば,他の惑星,金星や火星などの大気を持つ固体惑星や木星型惑星の地震学的内部構造探査を示唆するものであり,今後の惑星探査計画においても重要な視点を与える.そのためにも常時地球自由振動の性質を良く理解することは重要なことである.そこで,比較的ノイズレベルの低い観測点の連続データを集め,観測点間のクロススペクトルを角距離毎に並べ,それをルジャンドル展開することで,周波数×波数面上のスペクトルとして求めた.その結果,これまで不明だった8mHz以上での常時励起振動を検出することができた.特に10mHz付近のパワースペクトル密度で知られていたノイズレベルの高まりが,実は自由振動から成り立っていたという知見を与えたことは大きい.また,常時地球振動が大気励起である証拠を固めるため,大気モードと結合しているために生じていると考えられているOS29の振幅超過が大気擾乱仮説で説明できるか理論的な考察を行なった.固体自由振動を励起している大気擾乱は大気音波モードも励起しているであろう.そこで,大気擾乱による音波モードの励起量をLighthillメカニズムに従って求め,それと結合して生じる分のOS29の振幅を見積もった.結果は観測された常時自由振動に見られるOS29の超過振幅と調和的な値になった.OS29のような大気結合モードは大気擾乱による直接的なエネルギー供給の他,大気モードを通しても振動エネルギーが供給されていると考えられよう.更に大気擾乱と常時自由振動との関連を調べるため,超音波風速計による観測を東京大学千葉演習林内にて実施し,励起源と考えられる大気擾乱の性質を調べるためのデータ蓄積を行なっている.
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