この研究計画では、まず、伸び縮み振動の基本モード及び高次モードから、anomalous splittingが存在しないモードについて、これらのモードの固有周波数に影響を及ぼさず、またsoft core splittingに対応する固有モードが現れずに存在できる層が存在しうる位置、その厚さ及びS波速度の上限値を検討した。そして、外核内の外核/内核境界直上に厚さ約40kmでS波速度0.017km/secの層を導入することにより、anomalous splittingが存在していない基本モードと大部分の高次モードに影響を及ぼさずに、3S2のみにsoft core splittingを示すモードが現れることを確認した。次に、内核/外核境界に導入した微小な剛性率を持つ層によりsoft core splittingを示すモードである3S2の、自転と楕円体の形状の効果によるスペクトルの分裂を計算し、観測されたanomalous splittingのスペクトル分裂幅との比較を行った。その結果、自転と楕円体形状の効果によるスペクトル分裂幅を足しあわせると観測されたanomalous splittingのスペクトル分裂幅を十分説明できることが分かった。また、3S2については、この研究課題で得られた値を持つ内核/外核境界の微小な剛性率を持つ層にトラップされたモードで、ほぼ同じ固有周期を持つモードが存在することが分かった。このために、内核/外核境界の微小な剛性率を持つ層内にトラップされたモードと3S2とがカップリングを起こし、地表にまで大きな振幅を持っモードが現れたと考えることが出来る。今後この層の存在を実体波の観測から確認するために、その準備として、地球内部の3次元構造を考慮した地球モデルに対する理論地震記録を正確に計算するスペクトル要素法により、地球シミュレータの243ノードを用いて周期5秒までの地震波を計算する方法を確立した。
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