科研費申請時には年周地殻変動は現象のみが知られておりその原因は謎であったが、本研究により原因がほぼ究明された。日置はGPS全国観測網の最近2年間のデータを国土地理院のウェブページより取得し、そこに現れる年周成分の構造を詳細にしらべた。その結果年周成分は既に知られているように島弧の走向に直交する方向に出ることを確認するとともに、その位相が脊梁山脈の両側で反転することを新たに見出した。また従来ないとされていた鉛直成分にも明瞭な年周変動が存在することを明らかにした。日置は同時にアメダス気象データを収集、日本列島(主に東北日本)の積雪量分布を明らかにし、さらに積雪断面調査データを収集して積雪平均密度が積雪最大時で0.4g/cm^3程度であることを見出した。地球表面の荷重がもたらす変位をグリーン関数により計算し、アメダスデータが示す積雪深度に積雪平均密度を掛けて得られる荷重がもたらす地表変位がGPSで観測されたものとほぼ一致することをみいだした。田村は地殻変動連続観測データで年周成分と間違いやすい潮汐成分やゆっくり地震成分の分離手法を議論し、さらに年周視差によって銀河系の測距を行うVERA計画における年周地殻変動の影響について詳細な検討を開始した。本研究の主要部分はサイエンス誌に掲載されるとともに、地震学会の会員情報誌へ解説記事として掲載された。日本列島の地震活動には明瞭な季節性が見られるが、積雪荷重との因果関係はまだ明らかではない。次年度はこの問題に取り組んで研究を完成させる予定である。
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