研究概要 |
有珠山2000年噴火に伴う洞爺湖(最大水深177m)への影響について,2001年7月19日〜10月31日の期間,湖内2ヶ所に係留系を設置し,流速・濁度・水温・新生沈殿物量に関する連続データを取得した.また同時に,TTDプロファイラーによる定点観測によって,20cm深ごとの濁度・水温鉛直プロファイルを得た.結果として,雨量が5.5mm/hを越えると,水温躍層と底層に同時に高濁水が存在することが確認された.これから,降雨による泥流発生によって洞爺湖へ高濁水が流入し,これが懸濁中層流と懸濁底層流を同時に発生させることが判明した.この高濁度層の形成は,今回の有珠山噴火口から洞爺湖へ延びる流路工の沖合で最も顕著であった.このことから,降雨の影響は,長流川からの放水よりも,有珠山噴出物の流入を通して同湖に広く及んでいることがわかった. 他方,新火口N-12で,2001年7月31日から化学物質収支に関する観測を実施した.N-12にある湖で水位・電導度・水温の時系列データを得,これに加えて,随時の気象観測と採水による化学分析を行った.分析結果はまだ得られていないが,水収支としては,地下水流入・流出よりも湖面蒸発が卓越する,いわゆる「蒸発流出型湖沼」であると判断される.地下水流入・流出のそれぞれの寄与については,分析結果を待って量的に判断したい.
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