研究概要 |
平成14年度は,洞爺湖については2002年3月〜8月,新生池沼の泉池とN-19火口池については2002年4月〜2003年2月にそれぞれ水質・気象に関するモニターリングを実施した. 洞爺湖では有珠山噴火の2000年と翌2001年にくらべ降雨に対する底部濁度の増加はみられなくなった.これは,有珠山噴火口周辺の人為的な火山噴出物除去や裸地斜面工事によって泥流発生が抑制され,洞爺湖への土砂供給が大きく低下したことを意味する.また,2000年7月からの湖流濁度観測を通し,トラップ内沈殿物の堆積機構として「静水中における懸濁物質の重力沈降」でほぼ近似できることがわかった. 他方,上記の2つの新生池沼で地形測量を実施し,水位に対応した両池の等深線図を得た.これにより,気象データを用いてバルク法により水面蒸発量を見積もった.結果として,水収支式より両池での「正味の地下水流出量G_<in>-G_<out>」が定量的に求められた.また,泉池では結氷期の値も得られた.これによると,泉池では2002年10月11〜21日でG_<in>-G_<out>=-0.0044m^3/s,2002年12月22〜24日の結氷期でG_<in>-G_<out>=-0.0033m^3/s,と求められた.また,N-19火口池では2002年8月30日〜9月16日でG_<in>-G_<out>=-0.000048m^3/sであった.これから,泉池の地下水流出量は蒸発量の40倍以上であり,同池の容積を考えると水循環に果たす地下水寄与が大きいことがわかる.他方,N-19火口池では地下水流出量は蒸発量の3.4倍以上で,同池の貯水量調節機能は蒸発と地下水で同程度であることがわかった.
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