本研究では、琵琶湖に流入する主要な12河川を対象として、水文・水質観測を継続実施するとともに、琵琶湖の水質や湖流を連続的に測定することによって、河川水の水質・流量の季節変化、および河川によってもたらされる溶存・懸濁物質の挙動について定量的な把握を行った。また、観測値に基づいた数値モデルによって、湖の水質形成や湖水の滞留時間などについて評価を行った。 河川水には流域(地域)による特性と、水質の季節変化が明瞭に存在する。本研究では、年間を通じた河川観測を行うとともに、水田の代掻き、夏季の集中豪雨および渇水による河川水の変動に焦点を当てた観測・分析を行った。また、琵琶湖に流入する河川のうち最大の流域面積を有する野洲川を重点河川として、流路に沿った水質変化や季節変化を比較的短い時間間隔で調査した。 大量の降水直後には、河川水の電気伝導度が上昇するウォッシュアウト現象が見られるが、その後は希釈によって電気伝導度は急激に低下する。また、夏季や秋季には多くの河川で降雨による水温低下が観測され、河川水は湖の水温躍層の中に貫入する。 水田の代掻きによる濁水は一部の河川に流入し、窒素・リンなどの栄養塩が琵琶湖に流入する。また6月頃の「中干し」という排水によっても多量の栄養塩が流出している。 年間を通じた河川水の流入量と流入深度の観測値から、塩素イオンをトレーサとして湖水の滞留時間と塩素イオン濃度変化について調べた。その結果、春季に河川水が湖の表層に流入することが影響して、湖水の滞留時間は従来考えられていた値よりも長くなること、および現在の河川水の水質が改善されなければ、琵琶湖の塩素イオン濃度は年間約1mg/L上昇することがわかった。
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