研究概要 |
本研究は,温泉活動と地殻変動・地震活動との関連性を探求してゆくための予察的研究である.山陰地方から瀬戸内地方を経て四国地方にいたる中央構造線を横断する範囲で,温泉調査,水文調査,地質構造調査を行い,温泉現象が地質構造に規制された規模の大きい水の深部循環によるものであること,さらに深部の熱構造を明らかにすることを目的とする. 本年度は,山陰地方,特に,鳥取県中部地域の,三朝・関金・東郷・羽合温泉を調査し,温度,湧出量,電気伝導度,pHなどを測定し,採取した温泉水について化学分析を実施した.その結果,この地域の温泉水は,基本的に,NaCl型の深部熱水に由来し,SO_4,HCO_3成分は,それが地表に湧出する途中で付加されたものであることが知られた.したがって,NaCl型の深部熱水がどのように形成されたのかに研究の主眼を移す.来年度は,採取した温泉水の同位体とトリチウムを測定し,山陰地方のNaCl型温泉水の由来について研究をさらに進めてゆく予定である.また,これと併行して山陽地域から四国地域へと調査研究の範囲を移し,深部熱水の分布を調べる.なお,三朝温泉について地質構造調査を実施したところ,NE-SWとNW-SEの2方向の割れ目系の発達が確認され,温泉湧出機構の有力な手がかりが得られた.この地域はリニヤメントが複雑にからみあっており,三朝地域の割れ目系が広域の構造とどのようにつながっているのか,次年度に明らかにしてゆく予定である.
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