研究概要 |
台湾の東海上の亜熱帯西太平洋域の冬季に、オゾン全量の極小域が存在する。特に、2001年はその極小値が顕著で、190ドブソンユニット以下の値も観測されている。このような低い値が持続するのは短期間ではあるが、南極のオゾンホールにも匹敵するような低い値となっている。本研究では、この亜熱帯西太平洋域の冬季に出現する低オゾン量が、対流圏界面から成層圏下部の気温の非常に低い高度で生じる氷や硝酸3水和物(NAT)粒子上での不均一反応による影響をどの程度受けるのかについて、3次元モデルによる数値実験を行い調べた。東京大学気候システム研究センター/国立環境研究所 化学輸送モデルを用い、氷や硝酸3水和物粒子上での不均一反応を導入したモデルと、この反応の働きを意図的に止めたモデルとの計算結果を比較した。結果は、成層圏下部の不均一反応の働きによって、ClOやHO2の増加が見られるが、その増加量は,南極のオゾンホール発達期に比べると10分の1か与100分の1程度であり、また、その結果として不均一化学反応のオゾン全量への影響は、最大2〜3ドブソンユニット程度であることがわかった。さらに、この化学反応によるオゾン破壊量は、赤道大気準2年振動(QBO)やエルニーニョなどによるオゾンの輸送による影響に比べると小さい量であることがわかった。しかしながら、この化学オゾン破壊量は、この領域のオゾン変動に関して、完全に無視できる大きさでもなく、今後も、QBOなどによる輸送効果と共にこの領域のオゾン極小値出現に影響を与えると思われる。この領域のオゾン量監視が必要である。
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