本年度はPIN型のSi検出器とSi(Li)型のSi検出器を購入し、検出器の不感層の検討を行った。期待するエネルギー分解能が非常に高いため、検出信号が周囲ノイズに対して非常にセンシティブである。よって、検出器専用に特殊な変更を加えた前置増幅器回路を使用した。これらの装置を用いた実験の結果、真空チャンパー内でAm放射線源のα線測定では、不感層は数百nm程度であることがわかった。検出器と厚めの不感層ではあるが、今回の電子計測装置用としては、無視できる不感層の厚さであることが確認できた。 次に、シールド用のシンチレータ素材について検討を行った。本年はCsI、TlBrを購入し、測定を行った。シンチ光を検出するためにPIN型のフォトダイオードで実験を行った。これは、小型化を図るためであり従来の光電管を使う方式と大きく異なる。発光量の評価には、電子線としてSr線源とCs線源を用い、X線としてはAmを用いた。実験の結果、PINフォトダイオードでは十分な信号を得ることができなかった。そこで、アバランシア型のPINフォトダイオードを用いて再計測を行ったところ、アンチ信号として十分な大きさの信号が得られることがCsIについては実証できた。しかし、TlBrについては、十分な発光量を得ることができなかった。 シンチの強度についての検討も行ったところ、TlBrについては結晶が壊れやすくX線、γ線のアンチ検出としては非常に高い性能を期待していたが、本検出器での採用は見送ることにした。代わって、CsIは、十分な検出効率をもっていること、加工が簡単であり強度的にも問題がないことが確認できたため、Si検出器を内部に納めることができる、底付き円柱(井戸型)の加工・製作を本年中に終了した。来年度以降は、CsIを用いたアクティブシールド付電子検出器のビーム実験による総合性能評価を計画している。
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