高エネルギー粒子の発生過程における微細なメカニズムを知る上では、数十keVから数MeVまでの電子観測を時間・角度・エネルギーについて高分解能で測定する必要がある。しかし、十数keV〜数MeVのエネルギーを持った電子の観測機器は、日本においては十分に精度のよいものがない。 本研究においては、γ線などの測定技術として利用されてきた井戸型アクティブ・コリメータを応用することによって、高い角度分解能と四方から高エネルギー粒子が検出器に飛び込んでくるような環境においても、正しく動作する電子計測システムの開発を行った。また、中エネルギー側のエネルギー測定精度を向上させるため、ストリップタイプのSi検出器の開発とその専用読出し回路の開発を同時に行なった。その結果、井戸型のCsIシンチとストリップタイプのSi検出器を組み合わせることにより、コリメートの難しかった中高エネルギー電子の入射方向を数度以内で決定することができた。また、本研究によって開発した電子計測システムにより、高エネルギー粒子が四方から飛び込んでくるような状況においても、新たに導入したCsIシンチによって、入射方向が特定された電子のみを効率よく検出することが可能となった。非常にバックグランドの高い環境下に置いて、今までの検出器では、パイルアップの影響によって正しいエネルギー測定と強度測定が不可能であったが、本研究で用いたストリップSi検出器と専用の読出しチップの開発によって、観測対象粒子のエネルギーを正しく測定できること、また強度も正確に測定出来ることを示すことができた。
|