研究概要 |
これまでの調査で福井平野周辺は活発な断層活動が多い地域であることが明らかになってきた.そこで本年度においては福井東側地震断層,加越台地,大野盆地を中心に補足的な調査を行うとともに,全体のまとめを行った. 1.福井東側地震断層沿いの地形測量により,断層による扇状地面の変形を見出した.またこの付近で礫層上面が0.9〜1.4mずれた露頭を発見した.礫層は変位していない砂層に覆われており,1948年の福井地震時の変位ではない.断層下落側では礫層を覆う厚さ0.15mの粗粒砂層,および0.7mの多くの木片(小枝)を含む泥炭質な砂層が認められ,断層活動直後の堆積物と推定される.木片の14C年代測定結果は11世紀〜13世紀を示しており,福井県が丸岡で行ったトレンチ調査で現れた噴礫とほぼ同じ年代を示している.本調査結果の意義についてはさらに検討が必要である. 2.福井平野北側の加越台地西部で火山灰の抽出を行い,段丘形成年代を明らかにした.その結果,加越台地西部では0.5m/1000年を超える隆起速度が明らかとなった. 3.大野盆地南東部,木落断層の活動度,活動履歴についてまとめを行った.木落断層の平均変位速度は1.7〜2.3m/1000年とA級の活動度を示していること.活動時期としては2,850〜1,280cal BP,5,590〜4,620cal BP,11,100〜8,810cal BPの3回が読み取られたこと,また約5000年前の断層活動が引き金となって岩屑なだれが発生したことなどが推定された. これまでの調査により,本地域はこれまで推定されてきた以上に,A級の活動度を示す活発な活断層が多く,歴史時代にも幾つかの活断層が活動した可能性が示された.しかし本地域には調査が行われていない活断層も多く,今後ともさらに調査を継続してゆく必要がある.
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