研究概要 |
島弧の火山が過去数万年間の活動史を通じて,どれだけの量のイオウを供給するかを調べる目的で,浅間火山の早期から新期までの軽石の斑晶メルト包有物のイオウ濃度のデータ処理をした.妙高火山の新期スコリア,および富士火山の宝永噴火軽石とスコリアを採集して斑晶を分離した.そのメルト包有物を記載して主成分とイオウ,塩素濃度をマイクロプローブ分析した.これらの火山噴出物はマグマ混合して噴出した.一般に,斜方輝石,単斜輝石,および斜長石斑晶はフェルシックマグマ起源であり,そのメルト包有物はフェルシックな組成をしてイオウ濃度が低い.これに対して,カンラン石はマフィックマグマ起源であり,捕獲されたメルト包有物の組成はマフィックな組成範囲に限られ高濃度のイオウ含有量を有する.石基ガラスの組成はマフィックとフェルシックの2つの領域の間にある.カンラン石斑晶にはFe硫化物やFe-Ni-Cu不混和硫化物球粒が捕獲されている.マフィックマグマはカンラン石を晶出した早期にイオウに飽和していた.カンラン石に捕獲されたマフィックメルトは,そのS-Kα波長シフトから酸化的な条件にあってイオウのSO_4^<2->/S^<2->が高く,高温の初生マフィックマグマは大量のイオウを溶解して地殻上部のフェルシックマグマ溜まりへ供給した.この酸化条件では温度が降下するとイオウ溶解度が著しく低下するので,地殻上部のマグマ溜まりでマグマが不混和硫化物メルトを析出した. こうした結果から,これらの代表的な島弧火山ではマフィックマグマがその発生域から大量のイオウを運び上げてくることがわかった.さらに,イオウの噴気の盛んな火山フロントでの斑晶メルト包有物のイオウを系統的に調べるために,北海道,東北,および北関東の過去数万年の噴出物を採集して,継続する来年度の研究の準備をした.
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