研究概要 |
平成13年度には,まず,岐阜・滋賀県境の伊吹山の西側斜面に発達する崩壊地とその崩壊地の山裾を流れる姉川上流に分布するせき止め湖堆積物について詳細な野外調査を行った.そして,せき止め湖堆積物の露出のよい地点について,柱状図を作成するとともに,年代測定用試料を採取し,核燃料サイクル開発機構東濃地科学センターにおいて14C年代測定を行った.その結果,以下のような事実が明らかとなった. 1.姉川流域には,厚さ数mmの明暗の縞模様を呈する泥層がところどころに分布する.泥層中には珪藻化石や木片などの有機物が普遍的に含まれ,細粒の石英などの砕屑粒子もみられる.堆積構造や化石相からみて,この泥層は湖(せき止め湖)の堆積物であると考えられる. 2.せき止め湖堆積物中に含まれる木片等の14C年代測定を行い,そのうち,約20試料について有意な年代値を得た.それらの年代は,約33,000〜35,000年前と約5,000年前に集中する.このことから,伊吹山西面では過去に最低2回は大規模な崩壊が発生したことが明らかとなった. 3.せき止め湖堆積物には明暗の縞模様が特徴的に発達する.この堆積構造がどのようなメカニズムにより形成されたものであるのかは現在検討中であるが,年縞であるとすると,上記崩壊は,最低数百年にわたってせき止め湖を存続させるような大規模なものであったことになる.
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