研究概要 |
平成14年度には,平成13年度に引き続き,岐阜・滋賀県境の伊吹山の西側斜面に発達する崩壊地とその崩壊地の山裾を流れる姉川上流に分布するせき止め湖堆積物について詳細な野外調査を行った.そして,せき止め湖堆積物の露出のよい地点について,再度,詳細な柱状図を作成するとともに,堆積学的検討用試料および古生物学的検討用試料を採取し,解析を行った.その結果,以下のような事実が明らかとなった. 1.姉川流域に分布する,厚さ数mmの明暗の縞模様を呈するせき止め湖堆積物について,顕微鏡観察用薄片を作成し,縞状構造の成因を検討した.その結果,暗色部には微細な有機物あるいは直径数10〜数100ミクロンの褐色粒子が濃集していることが判明した.この褐色粒子が何であるかは現在も引き続き検討中である.一方,明色部は珪藻,砕屑粒子,火山灰等が濃集してできていることがわかった. 2.明暗の縞模様が,珪藻化石の量の変動により形成されているとすると,それが年縞あるいは1年に2セットの縞であることが想定されるが,本地域のせき止め湖堆積物の縞模様は,それだけでできているわけではなく,より詳細な検討を行わなければ,縞のセットから堆積継続年代を推定することはできない. 今後は,珪藻化石の量を定量的に測定することと,珪藻の種構成を検討することにより,この縞状せき止め湖堆積物の堆積環境・堆積メカニズムを検討するとともに,テフラクロノロジーを用いて,このせき止め湖堆積物の年代を推定することを試みる.
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