研究概要 |
岩石破壊時の新生面形成・摩擦・発熱などの外的刺激に起因する,試料表面からの荷電粒子放射の機構(フラクトエミッション,トライボエミッション,エキソ電子放出)が,破壊誘起電磁気現象に及ぼす影響を評価することを目的として,(1)油圧制御システムの導入,(2)電磁界変動検出用アンテナの試作,および(3)岩石破壊に伴う電荷変動信号の解析をおこなった. 油圧制御システムの導入 70MPaまでの電動式油圧ポンプと200MPaまでの手動油圧ポンプを組み合わせることで,試験容器内の圧力を迅速に設定値まで昇圧できるシステムを構築した. 電磁界変動検出用アンテナの試作 静水圧下での電界,磁界測定をおこなうために,圧力容器内に組み込めるアンテナ2種類を試作した.電界変動計測システムは,岩石試料に対し近接して対向させた2枚の板状銅板電極(30mm×30mm)を2対配置して,電極間に誘起される電荷変動の検出する仕様とした。プリアンプの入力インピーダンスは計測する信号の信号源インピーダンスが大きいことと,信号線接続による損失を少なくするために1MΩに設定した(周波数帯域はDC〜70MHz,利得100). 岩石破壊に伴う電荷変動信号の解析 岩石破壊に伴い検出される電荷信号の性質を,センサーの特性も含め定量的に解析した.直径約20mmの岩石試料の破壊により誘起される電荷量は,放電時定数が約1msの積分回路で近似されるセンサー回路を用いた場合,約10^<-11>Cとなることがわかった.試料の断面積(約3cm^2)と破壊前の信号発生継続時間(約10s)の値を用いると過渡電流密度として10^<-12>A/cm^2の値が得られる.M=6の地震における典型的な震源域の面積(10^8m^2)を用いて震源での発生電流を見積もると,およそ1Aとなる.この値は,一般に言われている地表での電磁気異常観測データを説明するものとしては2桁程度小さい.
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