研究概要 |
先ず,レニウム・オスミウムの分離濃縮のための化学操作過程におけるブランク低減のため試薬の精製を検討した.蒸留により精製を繰り返し,レニウムについては,3ピコグラム,オスミウムは0.02ピコグラムまで低減することが出来た.しかし,レニウムについては,フィラメントからの寄与が大きくブランクより重大な問題である.数種類の白金フィラメントについて検討を行ったがそれほど良好なものは見つからなかった.イオンソースの洗浄も重要であることが分かった.レニウムについては,このようなバックグラウンドからのレニウムの寄与の低減が今後の重要な課題である.測定精度向上のためより正確に磁場を測定しヒステリシスの効果を補正するためのコンピュータプログラムの改良を行った.このことにより測定は安定したが精度の向上はわずかであった.堆積岩類の年代測定のための基礎研究として,現世の堆積物のレニウム・オスミウムの測定を行った.淀川の河川堆積物,大阪湾の堆積物および第四期の大阪層群の堆積物をもちいて検討した.これらの試料それぞれ1〜3試料について測定したところレニウム濃度は,それぞれ0.052〜1.22ppb,1.85ppb,0.26ppbであった.また,オスミウム濃度は,それぞれ0.021〜0.086ppb,0.38ppb,0.0035ppbであった.さらに,1870s/1880s同位体組成は,それぞれ0.15〜0.23,0.48,0.74であった.河川堆積物のオスミウム同位体比が低いが,人為起源の鉄などの金属に含まれているオスミウムの寄与が高い可能性がある.大阪湾堆積物も同様であり,海水の値<約0.8>と比較して低いのは人為紀元である可能性が高い.これらに加えて,第三機の堆積がについても分析を行ったがアイソクロンを得るにはいたらなかった.また,海底に堆積した熱水鉱床である黒鉱について検討し論文をまとめた.今後,さらに測定精度を上げる努力をして,現世堆積物および,古い体積岩類について検討する予定でる.本研究においては,その足がかりが得られレニウム・オスミウム法が堆積岩の年代測定に有効であるとの感触が得られた.
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