本研究の目的は四国南岸地域の湖沼において表層の堆積物を正確に採取し、堆積物に残された津波記録と歴史の津波記録を対比することである。昨年度は、この目的を達成するためにまず、堆積物の表層1メートルを正確に採取するための新型コアラーを開発した。高知大学は採泥機器・技術に関して日本有数であることを誇っているが、表層堆積物を正確に採取することに関しては十分とはいえない。このため新型コアラーの開発、具体的には精密な小型ピストンコアラーと小型のグラビティコアラーおよび小型簡易型のバイブロコアリングのためのアタッチメントを作製した。本年度はこのコアラーを用いて高知県須崎市のただすが池の表層堆積物を採取し、年代測定を行うことにより堆積物中に残された津波記録の年代を明らかにし、歴史記録との対比を行った。 採泥は通常ピストンコアラー(内径69mm、アルミパイプ)、小型ピストンコアラー(内径50mm、アクリルパイプ)、グラビティコアラー(内径44mm、アクリルパイプ)、および手(内径50mm、アクリルパイプ)を使って行った。その結果得られた7本の試料について堆積物の観察を行った。 ただすが池は現在淡水で、昭和南海地震の際には津波が流入したことがわかっている。コアの表層堆積物の観察から表層から約35-40cm、40-45cm、55-60cmに顕著な変色層が確認できた。さらに55-60cm層準からは海棲の石灰質ナノプランクトン化石が産出し、海水の流入が証拠づけられた。 小型のピストンコアラーを用いて採取したコア試料2本について鉛210法を使用して堆積速度を求めた。その結果堆積速度はSS02-04コアで1.0cm/year、SS02-07コアで0.9cm/yearという値が得られた。これらの値から約55-60cmの層準は約50-60年前に相当し、1946年の昭和南海地震に対比することができると考えられる。
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