『琵琶湖西岸の比良川ファンデルタにおける土砂輸送と堆積作用』の研究の概要は以下の通りである. 琵琶湖西岸の比良川を中心とする地域には、比良山系山麓に多数の扇状地が発達し、さらにそれらが直接湖水にデルタとして浸水して、いわゆるファンデルタ群(臨湖扇状地群)を形成している.当該地域には大谷川、比良川、家棟川、滝川の4つのファンデルタが発達する.ファンデルタの陸上部である扇状地は、いづれも上部扇状地と下部扇状地から構成される.上部扇状地は典型的な扇状地形をなし、土石流からの堆積が卓越する.下部扇状地には細長く伸長した複数のローブとローブ間の低地が認められる.ローブでは水流からの堆積が卓越する. 一方、これら扇状地の水中延長部であるデルタ斜面の地形や堆積物について水中ROVを用いた湖底調査を行った.その結果、デルタ斜面では堆積物が急峻な斜面を形成していることと、陸上のローブ地形の延長に相当する地形や堆積物がほとんど連続して追跡出来ないことが明らかとなった.またその斜面上の堆積物が沖合いに向けて急速にその粒度を減じて堆積していることも明らかとなった.さらにデルタ斜面上には、一部で水中斜面の崩壊を示唆する礫質の特異な堆積物が認められる.これらのことから、ファンデルタの水中部であるデルタ斜面では、急峻な斜面の不安定さを反映した土砂の斜面下方への再動が頻繁に起こっているものと考えられる.
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