本研究は紫外光および可視光域また赤外光域の段階的出力波長帯が選択可能な可変光発生装置を利用した古生物学的試料また堆積岩などの表面観察により、非破壊的に従来にない情報の入手方法を考察しようとしたものである。本研究者らがこれまで収集した各種の試料について、手法的には、試料への段階的な波長での光線照射、蛍光観察用専用ゴーグルによる各波長での試料の発する蛍光の観察、適正波長を選定した蛍光観察用ゴーグルに基づく撮影フィルターの選定、適正撮影用フィルターを用いてのデジタルカメラによる予備撮影、比較を目的とした可視光線下でのデジタルカメラによる撮影などの順をふみ、その撮影結果から比較を行なった。一部現生試料も含むが、ウニ類、ヒトデ類、貝類、サメ類、植物や生痕化石などの視覚的に比較のより可能な比較的大型の化石試料ではより鮮明に結果が現れ、報告書にはこれらについて取りまとめた。観察・撮影の結果、各種試料それぞれに蛍光の有無や波長帯による特徴が認められ、波長を変化させることで従来の可視光観察では得られない情報が現れることが確認された。具体的例を挙げると、蛍光観察の場合、自家蛍光を発する石灰質系試料に関しては、530nmで全体の描写がそれ以下の波長のものと著しく異なることから、530nmの波長を基準としそれ以下の波長による自家蛍光との比較観察が、有用な情報の入手に有効な手段であると判断された。また自家蛍光を有しない凝灰岩中の植物化石や生痕化石では赤外線写真で極めて明瞭な描写を示すことなどから、白色の凝灰岩の関係する試料観察では赤外線が有用な手段となると考えられるなどの結果が得られた。さらにフィルター選定も重要な要因の一つと把握された。自家蛍光を発する部分の可能な限りの成分分析と、すでに着手しているが、基準となる各波長での蛍光色のカラーチャートの作成が今後の重要課題である。
|