研究概要 |
神奈川県の上総層群小柴層(更新統),宮崎県の宮崎層群高鍋層(鮮新統),長野県の柵層(鮮新統)の湧水性化学合成群集化石を産する産地周辺の詳細な地質調査と化石の産状調査を行った.また,各産地から産するコンクリーションの炭素と酸素の安定同位体比を測定した.今年度明らかとなったのは,以下の点である, 小柴層.周辺の凝灰岩層を追跡し,化学合成群集が産出する層準を確定することに成功した.従来の研究成果と比較すると化学合成群集の栄養源となっていた湧水は炭素の安定同位体比からメタンが主体で,湧水の期間は数十万年も継続していた可能性がある.また湧水のある層準は海退相に一致している.また,下位の大船層からも化学合成群集化石を発見し,ボーリング調査を実施した. 高鍋層.詳細な地質調査の結果,化学合成群集化石の産出する範囲が南北約100m,東西約60m,層厚約10mであることを決定できた.また炭素の安定同位体比は,湧水がメタンを主体とするものであることを示した.化学合成群集化石の産出する層準は海退相に一致している. 柵層.概略的な地質調査と化石の産状調査を行った.化学合成群集は向斜軸部に産出し,炭素の安定同位体比は湧水の主成分がメタンであることを示唆している.炭酸塩からなる多くのベインを確認したが,それらの酸素の安定同位体比は熱水の影響を示唆している.
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