研究概要 |
神奈川県の上総層群小柴層(更新統),宮崎県の宮崎層群高鍋層(鮮新統),長野県の柵層(鮮新統)の湧水性化学合成群集化石を産する産地周辺の詳細な地質調査と化石の産状調査を行った.また,各産地から産するコンクリーションの炭素と酸素の安定同位体比を測定した.今年度の成果は,以下の通りである. 小柴層:平成13年度に続き周辺の凝灰岩層を追跡し,化学合成群集が産出する層準を確定することに成功した.従来の研究成果と比較した結果,湧水の期間は約二十万年間であったことが確認された.また,化石の破片化の程度と角礫化した岩相からポックマークの存在を確認した.これらの成果を論文にまとめ,現在学術雑誌に投稿中である. 高鍋層:平成13年度に続き化学合成群集化石の産出する露頭とその周辺の地質および古生物データの解析を行った.その結果,この群集は,メタン湧水に依存する冷湧水群集であること,その産出範囲が南北約100m,東西約60m,層厚約10mであること,外側陸棚に生息していたこと(水深50〜150m),貝化石がストーム起源の流れによってリワークを被った可能性があることが明らかとなった.これらの成果を複数の論文にまとめ,学術雑誌に受理あるいは投稿中である. 柵層:詳細な地質調査と化石の産状調査を行った.化学合成群集は向斜軸部に産出し,炭素の安定同位体比は湧水の主成分がメタンであることを示唆し,また炭酸塩からなる多くのペインの酸素の安定同位体比は,熱水あるいは陸水の影響を示唆していることが明らかとなった.
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