研究概要 |
長谷川は国内の複数の専門家と研究打ち合わせを行った上で、2001年の夏には研究協力者を伴って北海道各地(浦河町、穂別町富内、穂別町ソウサヌシュベ、平取町振内、夕張市登川、夕張市真谷地沢、羽幌町、中頓別町および稚内市)の白亜系蝦夷層群を調査し、大型化石と泥岩試料(浮遊性有孔虫および有機炭素分析用)を採集した。それらの大型化石試料は利光によって鑑定され、従来のイノセラムス帯に区分された。泥岩試料は長谷川によって有孔虫処理を施した結果、多数の浮遊性有孔虫個体を得た。これまで日本では報告がなかった種や新種が含まれており、新属となる可能性のあるものもある。これらのデータを得た後にも複数回にわたって各専門家と打ち合わせを重ねてきた。浮遊性有孔虫のうち特に年代指標性が高いといわれてきた種はイノセラムスの示す年代とほぼ調和的で、従来のイノセラムスおよび浮遊性有孔虫年代層序区分が問題なかったことを示唆している。しかし、浮遊性有孔虫のうち、年代指標性がこれまで強調されてこなかった種のうち8種は、従来知られていた層序的産出範囲よりも上位の地層から確認され、ヨーロッパなどとは異時性を持っていることが示唆された。これまで北海道の蝦夷層群において大型化石による年代層序と浮遊性有孔虫による年代層序が食い違うという問題が指摘されてきたが、これは、浮遊性有孔虫による年代層序決定の際にこのような異時性を持った種を用いてきたことに由来する可能性がある。すなわち、年代指標性の高いとされる種の産出が不良であるチューロニアンからサントニアンにかけて年代決定にしばしば用いられてきたWhiteinella, Archaeoglobigerina, Hedbergellaの複数種,Praeglobotruncana gibba, Dicarinella imbricataおよびDicarinella canaliculataなどは、北西太平洋における最終産出層準は従来知られていたよりも後の時代まで延びる。これらの種の最終産出(LO)は国際対比には使えないことが明らかとなった。
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