研究概要 |
本年度は主要な地質調査を行った.調査地は北海道の羽幌,古丹別および穂別地域である.約20日間の調査で,特に古丹別地域に重点を置いた.そこでは3〜5m間隔で同位体比測定用の試料を採取した.また,露頭から産出する,破片も含む全ての大型化石を鑑定し,1/1000のルートマップを作成した.約50試料について,信州大学の質量分析装置で炭素同位体比の分析を行ったが,装置の調子不良により,来年度の再測定が必要である. 穂別地域では浮遊性有孔虫化石を良好に産出し,特に年代指標性が高いと思われる,KS21/22境界を確認した.また,炭素同位体比の分析(信州大学の装置を借用)から,その境界付近に炭素同位体比ピークがあることが分かったが,古丹別地域や大夕張地域の過去の研究でも類似のピークが認められている.それは最近ヨーロッパで広域対比可能なものとして議論されているものと同一である可能性が高い.さらに調査が必要である. 羽幌地域では,各イノセラムス帯内で有孔虫用の試料を採取し,有孔虫殻の炭素・酸素同位体比を測定した.その結果,ほぼオリジナルな値を残している試料が多いこと,C02をメタンに還元するバクテリアの活動があったこと,当時の海水温が表層で26度,海底で18度程度であったことなどが示唆されている. また,試料中に含まれる有機物を最新の設備で同定するため,カナダ地質調査所を訪問した.ここでは,レーザー照射走査蛍光顕微鏡などを使用し,含まれている有機物を観察した.
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