研究分担者 |
福澤 仁之 東京都立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80208933)
池原 研 産業技術総合研究所, 主任研究官
北里 洋 海洋科学技術センター, 固体地球統合フロンティア研究システム, 領域長 (00115445)
斎藤 毅 名城大学, 理工学部, 助教授 (50242813)
延原 尊美 静岡大学, 教育学部, 助教授 (30262843)
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研究概要 |
函館湾は海洋生物の中間温帯区と冷温帯区の境界があるので,生物種の組成変化から小規模な気候・環境変動を解読できる.そこでピストンコアラーを用いて,函館湾の9地点で堆積物試料を採取し,堆積物と貝化石・浮遊性有孔虫の層位分布を調査し,以下の結果を得た. 水深50m以浅の海底面下20-30cmに,大量の人為起源物質(石炭と不定形や小球状のガラス質粒子)を含む級化層理を持つ厚さ10cm程度の単層があることがわかった.また花粉解析の結果,この単層の堆積以降にマツ属とネギ属の占有率が増大していることが分った.人為起源粒子と花粉の層位分布変化と函館湾周辺の人間活動と自然災害の歴史及び人為起源粒子の形成・供給過程を統合的に考察して,我々は,人為起源物質を1945年の函館空襲による大型船舶の被弾・大破炎上に由来するものであり,級化層理の発達した堆積層は1954年の洞爺丸台風によって形成されたストーム堆積物であると結論づけた.このストーム堆積物を使って堆積速度を評価した結果,過去200年間には貝類と浮遊性有孔虫の種組成はともに統計的に有意な変化は見出せなかったが,浮遊性有孔虫の密度は亀田川河口の人為改変のあった1885年頃に急激に減少した事が判明した.このことから,函館湾においては過去200年間に両分類群の種組成を変化させるほどの気候変動があったとは言えないが,人為改変に伴う河川からの栄養塩の供給停止による沿岸の生物生産量の減少が起きたことを明らかにすることが出来た.また,本研究で見つかった入為起源物質は,空襲を受けた沿岸海域からも検出されるであろうから,それらの海域での古環境解析に有効な時代指標になりうる.
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