研究概要 |
本研究者等は、1)鹿児島湾、2)南部八代海(水俣湾)および3)有明海から採取した海底表層堆積物の堆積学的研究、底生有孔虫群集からみた堆積環境、堆積物に含まれる汚染水銀の時空分布について研究を行なってきた。1)鹿児島湾において、海底表層堆積物に含まれる貝形虫殻の分布を解析し、環境要因(水塊特性;人間活動;火山活動)との関係を報告(Bodergat et al.,2002a, b)してきたが、現在、貝形虫殻の化学分析結果と水塊、底質に含まれる重金属との関係について2つの論文を投稿中である。2)南部八代海において、柱状試料における底生有孔虫と水銀含有量の垂直変化から、Bulimina denudataが水銀汚染の指標種になりうる可能性を指摘した(大木ほか、200;Oki、2002)が、柱状試料の水銀汚染の始まった層準直下でB. denudataの産出頻度がすでにやや高くなっていることについて、この海域であらたに採取した10地点の柱状試料でB. denudataの生体殻の生息深度について調べた。その結果、B. denudataが海底面下8cm前後にまで潜って生息していることがわかり、水銀汚染の始まった時点で他の種が減少する中で水銀汚染に強いB. denudataが当時の海底下にも生息していたためであることが明らかになった。この結果は、2004年3月の第2回有孔虫研究会で発表した(大木、2004)。3)有明海から採取した55地点の海底表層柱状試料について粒度分析を行ない、有明海の粒度組成分布から海底付近の底層流の動態についてまとめた(投稿予定)。また、同海域の海底表層堆積物中の底生有孔虫群集解析について、来年度中に種のレベルまで解析を進め、学会発表後に論文にする予定である。
|