研究概要 |
1.採集活動:北海道上部白亜系蝦夷層群のノジュル中より、多数の鉱化植物化石を採集した。保存状態のよい鉱化植物化石には細胞組織がよく残されているため、標本の切断・切断面の研磨・蝕刻(etching)、およびピールフィルムの作成により、細胞組織・構造の詳細入手することが可能である。 2.ベネタイテス目に属するとされている植物は、その外形から、Otozamites, Pterophyllum, Zamites, Ptilophyllum, Neozamites,などの諸属に分けられている。これらの植物は年間通して、温暖湿潤であったと考えられる手取型植物群および、年間に乾燥季のある熱〜亜熱帯地域と考えられる領石型植物群どちらにも生育していた。ただし、それらの表皮構造にはその生育地域の気候の影響が見られる。領石型植物群から産出するものは手取型植物群から産出するものより、葉が肉厚で、表面のクチクラ層が発達している傾向が見られる。また、外形も異なり、両植物群から産出するベネタイテス目に属する植物で同種に分類されるものは知られていない。したがって、両植物群が確立する以前にその起源が求められると確信する。 3.ベネタイテス目は、中生代三畳紀中期に出現し、白亜紀末には衰退し、絶滅する。これは、恐竜類の起源および絶滅の時期とほぼ一致する。また、恐竜類の化石が多数産出する地域の近くからベネタイテス目植物の化石が多量に産出する。ベネタイテス目植物の葉の細胞組織およびその構造は、肉厚で、葉脈が細く、細胞壁が極度に肥厚したり、細胞内で化学物質が結晶するような特殊な構造も見られず、食物として適した構造をもっていたと推測できる。直接的な証拠は見当たらないが、当時、生育していた植物の中で植物食恐竜類の食物となっていたものと考えられる。
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