研究概要 |
本研究にとっての第一段階は,マグマ溜り中において噴出前に晶出していた鉱物斑晶をもった火山岩を特定することにあった。そのために,有珠山・三宅島・桜島といった現在活動中の火山からの噴出岩や東北日本弧に属する船形火山岩類や高館火山岩類などの玄武岩-安山岩や二上山の安山岩や九州豊肥火山地域からの流紋岩など数多くの火山岩試料を偏光顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて詳細に観察した。しかし,本研究で設定した条件の全てに適った試料は,すでにMiyake & Shimobayashi (2000)により用いられた船形火山岩類中のソレアイト質玄武岩が唯一であった。 そこで,この船形ソレアイト質玄武岩に対象を絞って,マグマ溜りにおける滞在期間に関して吟味した。この岩石では,Miyake & Shimobayashi (2000)により,ピジョン輝石中の離溶組織の解析から「長くても半年程度」というマグマ溜りにおける滞在期間が見積もられている。それに対して,この岩石中の斜長石斑晶の結晶サイズ分布からマグマ溜りにおける平均滞在時間を50〜560年という非常に大きな値を見積もった研究がある(吉村,2002;未公表)。 本研究では,これら両者を綿密に比較検討し,後者の値も大きく短縮する可能性を示した。そして,結晶サイズ分布による推定法もマグマ溜りにおける結晶の成長速度さえ適切に見積もれば非常に有効な手法であり,両者の推定を相補的に検討することによって,マグマのマグマ溜りでの貯留期間に関してより制約することができる可能性を示した。
|