研究概要 |
(Mg,Fe)_2SiO_4スピネルはマントル遷移層の最重要鉱物である。平成15年度は、分子動力学(MD)法を用いた計算機シミュレーションにより、Mg_2SiO_4スピネル相について、温度2000K、圧力30GPaまでの温度-圧力-体積状態方程式を高精度で求めることを試みた。結晶のポテンシャルエネルギーを、クーロン項、ファンデァワールス引力項、反発項から成る二体間相互作用の和で表した。加えて、酸素イオンについては、結晶内における多体相互作用を取り扱うべくbreathing shell modelを適用した。 得られたシミュレーション結果を、高温における、既存のMgOとMg_2SiO_4スピネルの温度-圧力-体積同時測定データと詳細に比較、検討した。その結果、MgO状態方程式と今回のMg_2SiO_4スピネル状態方程式が与える圧力値が、温度1500〜2000K,圧力18〜23GPaの範囲に渡って、非常に良く一致することを見出した。すなわち、両状態方程式が与える圧力値の差は、これらの温度圧力範囲で平均0.1〜0.2GPaであることを見出した。今回求められたMg_2SiO_4スピネル状態方程式は、マントル遷移層が関わる高温高圧X線解析実験の際の圧力スケールとして特に有用である。 加えて、ダイアモンドアンビルセルを用いた高圧粉末X線結晶回折実験により、(Mg,Fe)_2SiO_4スピネルの体積弾性率の鉄依存性を精密に求めた。
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