研究概要 |
本研究の目的は、原子間相互作用に基づく計算機シミュレーションを用いて、マントル遷移層を含む深さ300から900kmに至る地球マントルの物理・化学的性質を詳細に解明することにある。本研究により以下のような研究成果が得られた。 1.410km及び660km不連続面の両者共、(Mg,Fe)_2SiO_4の割合が50〜60vol%の場合は、密度及びP及びS地震波速度変化の全てにおいて、分子動力学(MD)法による計算値は、地震波観測モデルSF99と誤差1σの範囲内で一致した。しかしながら、pyrolileあるいはpiclogite組成の如何にかかわらず、410km及び660km不連続面の両者とも、MDによる密度変化の計算結果は、地震波モデルPREMあるいはak135による値に比べてかなり小さいことが明らかになった。 2.マントル遷移層の重要な構成鉱物であるパイロープ、メージャライト、グロシュラールガーネットにMD法を適用したその結果、上記3ガーネットとも、極めて高精度でそれぞれの結晶対称性、弾性定数の実測データを再現することに成功した。 3.Mg_2SiO_4スピネル相について、温度2000K、圧力30GPaまでの温度-圧力-体積状態方程式を高精度で求めることに成功した。更にシミュレーションで得られた結果を、既存のMgOの温度-圧力-体積同時測定データと詳細に比較、検討した結果、MgO状態方程式と今回の.Mg_2SiO_4スピネル状態方程式が与える圧力値が、温度1500〜2000K,圧力18〜23GPaの範囲に渡って、非常に良く一致する(誤差は平均:0.1〜0.2GPa以内)ことを見出した。
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