研究概要 |
本年度は野外調査に重点をおいた。中・北部九州(姫島・湯布・鶴見火山・九重火山・阿蘇火山・金峰山・雲仙火山・多良岳火山)では,島弧の横断方向に沿って各火山岩地域から代表的な火山岩を採取し,地質調査も行った。また南九州地域では,姶良・阿多カルデラの噴出物との比較と広域的な組成変化を検討するため,未調査だった鬼界カルデラ(竹島・硫黄島)においても火山岩の採取を行った。一方,南方の沖縄トラフでの潜水調査プロジェクトにも参加し,多数の火山岩試料を採取した。 これらの岩石について,岩石記載および全岩主成分・微量成分元素の定量分析を行った。中・北部九州では,火山フロント〜背弧域の広い地域において,島弧タイプとプレート内玄武岩タイプの両者が存在することが明らかとなった。本地域では,沈み込んだフィリピン海プレートは阿蘇火山の直下には達していないため,背弧域での島弧タイプのマグマの成因については,今後同位体比データも加えて検討する必要がある。 鬼界カルデラでは,玄武岩と流紋岩が卓越したバイモーダルな火山活動がカルデラ形成前後を通じて生じたことが明らかとなった。また火山岩の組成にはカルデラ形成前後を境にした系統的な組成変化は認められない。 来年度は,これらの岩石のSr-Nd-Pb同位体比の分析を行い,これらのデータに基づき九州下のマントル・ウェッジの化学組成の特徴およびマグマの分化様式を明らかにする予定である。
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