研究概要 |
1.中部九州での島弧横断方向での広域化学組成変化を検討した。 (1)由布鶴見〜阿蘇火山を含む火山フロント部と雲仙〜多良岳の背弧側火山とでは,微量元素およびSr-Nd-Pb同位体組成に違いが認められ,それぞれが異なる起源物質およびマグマ生成機構を有していることが明らかになった。 (2)背弧側火山のマグマは,インド洋中央海嶺玄武岩(MORB)タイプマントルとenriched mantle(EM)-IIとの混合線上にあることから,これら2つの端成分を起源とする。EM-IIタイプマントルは,プレート内玄武岩と類似し液相濃集元素に富んだマントルであり,九州西部に推定されているマントル湧昇流に起因する可能性が高い。 (3)一方,火山フロント部のマグマは,インド洋MORBタイプマントルへ,フィリピン海プレートの沈み込みに由来する「沈み込み成分」が付加されて形成されたと考えられる。これらのマグマには東西方向で系統的な組成変化が認められ,堆積物成分の寄与の割合が東へ増加している可能性がある。 2.南九州とテクトニック・セッティングが似ている南沖縄トラフの火山岩について岩石学・地球化学的研究を行った。 (1)南部沖縄トラフは,リフト発達の程度から東経123.5°を境として,その東部分と西部分とに分けられる。この地域的区分と対応して,火山岩の組成にも広域的な違いが認められる。 (2)西部分に産する火山岩は流紋岩を主体としており,マントル由来のマグマへの地殻物質の混染の程度が,東部分のマグマに比べて非常に大きいことが,化学データから示された。これは両地域での地殻の厚さの違いとも対応している。 (3)中央地溝沿いに噴出した玄武岩の組成には,東西部分で大きな違いはなく,両者とも島弧マグマの特徴を有している。すなわち,南沖縄トラフ下のマントルではプレート沈み込みの影響があることが分かった。
|