目的:結晶中で可視光が2種の楕円偏光に分かれて進む現象に関する正田篤五郎の研究の追試を行う。 試料:産業技術総合研究所地質調査総合センター地質標本館より、岩石試料の貸与を受けた。これは、昭和62年度科学研究費補助金(海外学術研究)課題番号62041024にて、ブラジル、ポッソスデカルダス近郊のタクアリ地区にて採取した比較的粗粒な霞石閃長岩の標本である。 前年度に確認した試料中の約10%を占める角閃石が異常消光の楕円偏光性を記述した。 装置:オリンパス光学工業(株)製のシステム偏光顕微鏡BX-Pを楕円偏光顕微鏡に改造した。主要な事項は下記の4点である。1)光源を水銀ランプに代え、光路中に狭帯域フィルターを置き546nmの単色光のみを照射光とした。2)楕円偏光の偏光子を装着した。3)既存の直線偏光の検光子の手前に四分の一波長板回転ホルダーを挿入した。4)CCDカメラの画像を解析するソフトを組み込んだパーソナルコンピュータを導入した。 観察:光学顕微鏡用の岩石薄片上の角閃石結晶の1個について、直線偏光を使った直交ニコルの観察では、完全に消光しなかった。 偏光子の上方で試料の下方にある四分の一波長板の方位を、波長板の中で速度の速い光波の振動方向が偏光子を通る波の振動方向と一致する方向から反時計方向に13°回転し、試料の上方で検光子の下方にある四分の一波長板をこれと相減的な位置に置くと消光が観測されることが分かった。この偏光の楕円率は0.23である。 結果:この観測結果から、正田の業績が一般の試料にも適用でき、正確であったことが証明された。
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