研究概要 |
1.マンガン酸化バクテリアによる重金属濃縮実験 海水中の重金属濃縮がマンガン酸化バクテリアによる可能性を検討する目的で、青函トンネル先進坑から採取された海水棲マンガン酸化バクテリアを培養し、濃縮実験を行った。10ppmのMn及び同濃度のNi, Coを含む人口海水100mlにバクテリア0.2mlを加え、海水中の重金属濃度の経時変化を測定した。その結果、マンガン濃度は数時間後から急激に減少し、ニッケルもマンガンの減少とともに減少するが、コバルトを加えた海水では濃縮が著しく低下した。このことから、重金属の種類によりバクテリアの濃縮機構に違いが生ずることが明らかにされ、海底堆積物中の重金属濃度の差を理解する上で重要な知見が得られた。今後は、粘土鉱物による重金属濃縮との差異について検討を重ねる予定である。 2.海底マンガンノジュールの分析 バルト海から採取されたマンガンノジュールの元素マッピング分析を、JEOL-EPMA8900を用いて行った。分析試料は浅海で形成されたもので、生成年代が若いことと成長速度が著しく速い(2000y/cm)ことが特徴であり、短期間のノジュール形成過程を観察することができる。分析結果から、試料中主成分量はMn>Si>Feの順であり、マンガンは試料の外縁部から中心部に向かいノジュール表面から1.5mmの狭い範囲に層状分布し、鉄は層間に、シリカは全体に均質分布することが明らかになった。またZn, Co, Ni各重金属の分布は近似していて、その分布はマンガンに一致する。これらの結果は、マンガンノジュールの形成が海洋の環境変化(水質汚染等)に大きく支配されていることを示唆している。今後は、濃縮機構について検討を行う。
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