含水鉱物-飽和水溶液-水蒸気系における各々の水の水素同位休分別係数から、含水鉱物の結晶構造が水素同位休分別に及ぼす影響を合理的に説明する目的として、本年度は、25℃において遷移金属(銅、コバルト、ニッケル)の塩化物の結晶水和物(銅は二水塩、コバルトとニッケルは六水塩)に関して、飽和水溶液-水蒸気間および結晶水和物-飽和水溶液間の水素同位体分別係数の測定を行った。両者の値より結晶水和物-水蒸気間の水素同位体分別係教が得られた。また、塩化ニッケルおよび塩化コバルトの飽和水溶液の温度を変えて、結晶水和物の構造異性休(四水塩および二水塩)の単詰晶を得る基礎実験を行った。55℃および60℃において塩化コバルト二水塩、および40℃において塩化ニッケル四水塩の単結晶が得られることを、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)滴定によって確かめた。 また、備品で購入したキャパシタンスマノメータで蒸気圧を測定するために、回転ポンプと油拡散ポンプを用いて、パイレックスガラスで差圧測定可能な真空ラインを製作した。このラインにキャパシタンスマノメータを接続し、0℃において、水のアイソトポマーであるH_2OとD_2Oの蒸気圧およびその蒸気圧差が、正確にかつ精度よく測定できることを確かめた。次年度においては、早速この装置を用いて、遷移金属(銅、コバルトニッケル)の塩化物の結晶水和物のアイソトポマー(CuCl_22H_2OとCuCl_22D_2O、CoCl_26D_2OとCoCl_26D_2O、およびNiCl_26H_2OとMCl_26D_2O)をそれぞれ調製し、それらの蒸気圧およびその差圧の測定に右手する予定である。
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