アエンデ隕石のCAI(タイプ-B)に相当する化学組成の酸化物混合試料を白金容器中で加熱溶融し、徐冷して結晶化させた。1℃/hrの冷却速度で天然の隕石中に見られるCAIと同様のメリライト、スピネル、アノーサイト、ファッサイト輝石を主とする生成物が得られた。 出発物質である酸化物混合試料中に少量のSrおよびBaを加え同様の実験を行った。SrとBaはそれらの鉱物結晶-融液間の分配係数に応じて結晶中に取り込まれる。アノーサイトに対するSrの分配係数を除くと分配係数の値は1より小さいので、一般に後から晶出した鉱物の部分ほどSr、Baの濃度が低くなる。固化した生成物中のSrおよびBaの分布をEPMAによって測定し、鉱物が晶出していく過程を推定した。 鉱物の晶出過程の推定には、Sr/Ca対Ba/CaをとってプロットするSBダイヤグラム法をもちいたメリライト中の測定値からだけでも、他の鉱物を含めた晶出過程の推定が出来る可能性が示された。しかし、分配係数の小さいファッサイト輝石と、鉱物結晶のサイズの小さいアノーサイトについての測定値を得ることが難しいことがわかった。また、SrとBaの濃度を高くするとBaおよびSrに富んだCAI中に存在しない長石が晶出し、これが障害になることがわかった。これらの問題を除く目的で、結晶化過程をいくつかの段階に分け、SrおよびBaの濃度をなるべく低くして実験を行った結果いくつかの改良点が見られたが、最終的には、低濃度で2次イオン質量分析法による測定が必要であると結論した。
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