始原的な隕石中のカルシウムとアルミニウムに富むインクルージョン(CAI)は太陽系の最古の固体物質と考えられている。実験室で人工的にこのCAIを合成する方法によって、その形成過程の研究を行った。まず、微量のSrとBaをトレーサとして加えて合成実験を行い、CAIが溶融状態から単一の冷却過程で生成する場合どのような順序で結晶が晶出成長して行くかをSrとBaの分布から追跡した。この目的のためには、Sr/CaおよびBa/Ca比をパラメータとして用いるのが有効である事がわかった。 CAIは構成鉱物間で酸素同位体が異常な分布を示すことから見ると、単一の冷却過程からはつくることが出来ないとされている。そのような分布の原因として、太陽系形成の初期の段階で、急激な再加熱によって部分溶融し、その過程で酸素同位体が交換された可能性が考えられている。Sr、Baを含まない合成CAIをSr、Baを含む溶融塩中に入れ、徐冷することによって、部分溶融再結晶を行わせ、その生成物中のSr、Baの分布から、その再溶融再結晶の過程の追跡を行い、Sr/CaおよびBa/Ca比をパラメータする方法が有効なことがわかった。 CAIは、メリライトをその構成鉱物として、最も普遍的に含んでいる。これらのCAIはゲーレナイト(Ca_2Al_2SiO_7)-オケルマナイト(Ca_2MgSi_2O_7)系の固溶体として存在しする。この系の相図上の固相線と液相線の間の温度に加熱された場合、固相と液相に分かれると考えられる。合成のメリライト固溶体をこのような温度領域で加熱し、モザイク状の微少結晶からなる独特の構造を観察した。この微少結晶は、加熱時間の1/3乗に比例して成長することがわかった。 人工CAIについて得られた結果を天然のCAIに応用することが出来れば、CAIの太陽系星雲中の熱履歴を調べることが出来ると結論した。
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