本研究では、ポテンシャル面を解析関数にフイッティングする事無しに、各時間で全エネルギーおよび全原子核上のエネルギー勾配を計算しながら、反応軌跡を時間発展する方法(ダイレクト・アブイニシオ・ダイナミックス法)の開発およびその反応系への応用を目的とし、以下の研究を遂行した。特に本年度は「クラスターのイオン化ダイナミックス、および電子捕捉ダイナミックス」および「S_N2反応へのクラスター場(溶媒分子)の効果」について研究し、その反応メカニズムの解明、および、今後の実験計画の指針となるモデルの構築を行った。具体的な研究成果を以下に示す。 (1)クラスター内反応場での新規な反応の理論設計、および、それらの化学反応を実時間で追尾することが可能となった。 (2)半導体およびグラファイト中の原子および分子(たとえば半導体中の不純物やホスト格子に捕捉された分子)の拡散現象(拡散速度の理論計算)を純理論的に明らかにすることができた。 (3)ポリマー中での伝導電子およびホールの存在状態、およびポリマー鎖上での移動現象を実時間で追尾することが可能となった。 (4)分子設計に必要となる分子特性(吸収スペクトル、磁気的特性)の温度依存性および外部刺激に対する分子の緩和過程を理論的に予測した。
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