研究概要 |
ブタ心筋からミトコンドリアを単離し、コハク酸を基質として呼吸調節率が3以上の分画を無傷ミトコンドリアとして測定に用いた。コハク酸で還元し、427nm励起の共鳴ラマンスペクトルを得た。これはチトクロム類の金属中心であるヘムの振動スペクトルである。試料にCOを通じると新しいラマン線が出現した(517、576および369cm^<-1>)。これらのラマン線は^<13>C^<18>Oでは低波数シフトした。これらのラマン線はチトクロムα_3のFe-CO結合のυ_<Fe-CO>(517cm^<-1>)およびδ_<Fe-C-O>に関係した振動モード(576,369cm^<-1>)に帰属できる。これらは可溶化チトクロムα_3のCO型の対応するモードの振動数と一致した・このことはヘムポケットの構造が可溶化によって影響を受けないことを意味する。 次に還元型ミトコンドリアとO_2との反応の追跡を試みた。測定の時間窓を反応開始後0.6msとしたとき571および804cm^<-1>のラマン線が現れ、これらは酸素を^<18>O_2に換えると低波数シフトした。それをもとにこれらのラマン線はυ_<Fe-O2>(酸素化型反応中間体)およびυ_<Fe=O>(オキソ型反応中間体)に帰属した。次の課題はこれらの反応中間体の寿命が可溶化酵素と異なるかどうか調べることである。 さらに可溶化酵素のMixed-Valence型と酸素の反応を時間分解共鳴ラマン分光法で追跡した。観測までの反応開始後の遅延時間は0.1〜2msとした。酸素化型に由来するラマン線の減衰に伴ってオキソ型反応中間体に由来するラマン線の強度増大が見られた。アルカリ性では中性に比べて酸素化型の減衰とオキソ型の生成が遅くなった。これらの結果はミトコンドリア中での反応機構を明らかにするための基礎データとして有用である。
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