閉環状二相共存線を有する混合液体の水素結合の変化と濃度ゆらぎ

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13640503
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 川瀬 俊為 新潟大学, 医学部, 教授 (30115018)
• 研究分担者: 丸山 健二 新潟大学, 理学部, 助教授 (40240767)
• キーワード: 混合液体 / 閉環状二相共存線 / 水素結合 / 濃度ゆらぎ / 中性子回折 / Rayleigh-Brillouin散乱 / 分子動力学 / 質量分析

研究概要

二元混合液体の中でもその混合状態が極めて特異と考えられている閉環状の2相共存線を有する2つの系、グリセリン-グアヤコール(2-Methoxyphenol)系及び重水一βピコリン系について、上部臨界温度・下部臨界温度近傍での水素結合の変化とクラスター形成・濃度揺らぎの特性を、光散乱(数百nmのオーダーの情報)及び中性子回折(1nm程度のオーダーの情報)さらに質量分析を用いたクラスターサイズの測定によって調べた。
光散乱の実験ではArイオンレーザーを光源とし、圧力掃引式Fabry-Perotエタロンを用いて、Rayleigh-Brillouin散乱を観測し、その解析にはBhatia-Thorntonの部分構造因子Scc(0)を導出する式を用い、混合のGibbs自由エネルギーΔGを計算し、種々の熱力学量を求めた。中性子回折の実験は原子力研究所東海研究所のJRR-3MのAGNESスペクトロメータを用いて準弾性散乱を測定している。試料はモル濃度で5%刻みで用意し、測定温度は室温(25℃)から95℃までで、特にグリセリン-グアヤコール系の光散乱の実験では2相共存線近傍では0.1℃以下の刻みで測定した。
実験結果から求めた混合のエントロピーΔSは、上部臨界温度より高温側では理想溶液的であるが、下部臨界温度より低温側ではクラスターの形成をうかがわせるものであった。これを確かめるべく、独立行政法人産業技術総合研究所の脇坂昭弘研究員に依頼し、重水-βピコリン系について、質量分析装置によるクラスターサイズの直接測定を行った。まだ十分なデータが揃っていないが、興味ある結果がでておりさらに実験を共同で行う予定である。
分子動力学シミュレーションも試みており、ドイツのコンスタンツで開催された第5回LMC(Liquid Matter Conference)において結果の一部を報告し、情報交換を行ってきた。

研究成果

• [文献書誌] T.Koishi et al.(S.Kawase): "A theory of electrical conductivity of molten salt"J. Chem. Phys.. Vol.116. 3018-3026 (2002)
• [文献書誌] Y.Kawakita et al.(K.Maruyama): "Strucure and dynamical properties of liquid In -Te mixtures"J. Non-Cryst. Solids. 312-314. 366-370 (2002)
• [文献書誌] K.Maruyama et al.: "Neutron Diffraction of Liquid Arsenic-Tellurium Mixtures near the Semiconductor-Metal Transition"J. Non-Cryst. Solids. 312-314. 356-360 (2002)
• [文献書誌] H.Endo et al.(K.Maruyama): "Local structure of liquid Te studied by neutron diffraction and EXAFS"Z. Phys. Chem.. (in print). (2003)
• [文献書誌] Y.Kawakita et al.(K.Maruyama): "Structure and Dynamic Properties of Molten IVb-Te Mixtures around Eutectic Region"J. Phys. Soc. Jpn.. 70 Suppl.A. 265-267 (2001)
• [文献書誌] H.Munemura et al.(K.Maruyama): "Network structure of M2-TeO2(M=Li, Na, Li0.62Na0.38) glasses"J. Non-Cryst. Solids. 293-295. 700-704 (2001)