本研究課題は、平成13〜15年度の3年間で研究を行う。この中で研究初年度の今年は、主に計算のための方法論とコンピューターコードの開発を行った。特に本研究では、分子内水素移動反応と内部回転と言う2つの運動形態を同時に取り扱い、これらの相互作用を詳細に検討する必要がある。これらの運動形態は、分子の運動としてはどちらも大振幅振動と分類される運動である。そこで本研究では、まず最初にこれら2つの異なった大振幅振動を取り扱うための方法論の開発を行った。これには、以前申請者が開発した反応曲面法を拡張すると言う方針で研究を進め、量子力学的Hamiltonianの表式を作る所まで研究が進んだ。しかしながら、このように複雑なHamiltoniannの固有解や時間依存の解を求める事は、一般的にかなり難しい。これにはとりあえず基底関数展開法で対応する事とし、上述の反応曲面法と共に実際に計算を行うためのコンピューターコードの開発を行った。更にこのようにして開発した方法を5メチル-9ヒドロキシフェナレノンの系に応用し、本研究で開発した方法が定性的には実験結果を再現する事を確かめた。次年度以降は、次のような方針で研究を行う予定である。 1、基底関数展開法に依らず、より高精度な固有解を求める方法を開発する。 2、電子励起状態も含め、より沢山の問題にこの方法を応用する。 3、実験とも比較検討する事により、この問題についての理論的なメカニズムの解析を進める。 なおこれらについてはすでに研究を進めており、1についてはスペクトル分解法の開発を、2については5メチル-マロンアルデヒドの問題や電子励起状態を精度良く求める方法の開発を行っている。
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