研究概要 |
(1)[1.1]パラシクロファンの新規速度論的安定化 反応活性な橋頭位炭素を立体的に覆う目的で、芳香環上もしくは隣接するメチレン炭素上への嵩高い置換基の導入による速度論的安定化を計画した。2つのt-BuMe_2SiO基をメチレン炭素上に有するビス(デュワーベンゼン)前駆体が21段階で合成され、その光互変異性による[1.1]パラシクロファン種の発生を検討した。その結果、発生した化学種の安定性は低く光による二次的な分解を伴っていることが示唆された。生成した化学種の同定を行うとともに、異なる置換基の導入などによる新規誘導体の合成に向けた検討を行った。 (2)[1.1]ナフタレノファンの合成と速度論的安定化 [1.1]パラシクロファンの拡張共役系である[1.1]ナフタレノファンの合成を目的とし、その合成経路の検討、特に光反応を鍵段階とする新規ベンゾ縮環法の開発を行った。その結果ベンゾキノンビスアセタールの[2+2]光環化付加と続くアセタールの脱保護によりベンゾ縮環が達成できることを見出し、各種置換ナフタレノファン合成を可能とした。この手法を用いた[5](1,4)ナフタレノファン誘導体の合成に成功し、[1.1]ナフタレノファンおよびベンゼン-ナフタレン混合[1.1]パラシクロファン誘導体合成への適用にも検討を加えた。 (3)[1.1]パラシクロファン合成中間体の新規合成法開発 ヘキサヒドロ-S-インダセン-1,5-ジオンは[1.1]パラシクロファン誘導体合成の共通前駆体となる化合物であり(9段階10%で合成)、その簡便な大量合成法が上記研究の遂行において強く望まれていた。今回、合成中間体の新規合成法開発に着手し、方法1(5段階40%)もしくは方法2(4段階41%))による大幅な合成段階の短縮化と収率向上に成功した。
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