リン・炭素二重結合系二座配位子を含む高分子の合成

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13640522
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 豊田 耕三 東北大学, 大学院・理学研究科, 講師 (50217569)
• キーワード: 高周期元素化学 / ヘテロ原子化学 / 低配位リン化合物 / 立体保護 / 速度論的安定化 / 遷移金属錯体 / 錯体触媒 / 高分子材料

研究概要

リン・炭素間のπ二重結合を有する二座配位子である、3,4-ジホスフィニデンシクロブテンの高分子量誘導体については平成13年度において既に合成しているが、続いて、より高度な課題である、幾つかのジホスフィニデンシクロブテンユニットの配列を制御しながら連結する手法の開発について検討した。この目的のためには、リン・炭素π二重結合を保ったままジホスフィニデンシクロブテンユニットを連結する方法の開発が必要になる。本研究では、チオフェン環の硫黄のα位へは比較的穏やかな条件で種々の置換基の導入が可能であることに注目し、まず1,2(2-チエニル)-3,4-ジホスフィニデンシクロブテン誘導体および1,2-ジ(3-チエニル)-3,4-ジホスフィーニデンシクロブテン誘導体を合成し、チエニル部分へのアルキル基の導入を経由してオリゴマー型のジホスフィニデンシクロブテン誘導体を合成することができた。分子量測定結果からもオリゴマーであることが支持された。また、最初の段階でチオフェン環同士をメチレン鎖で連結したα,ω-ジチエニルアルカンからも高分子量型ジホスフィニデンシクロブテン誘導体を合成した。得られた高分子量誘導体の錯体形成反応について検討し、さらに2-チエニル体と3-チエニル体の間で金属錯体形成における選択性があるかどうかについて検討したが良好な選択性は発現しなかった。これと並行して複数の安定化部位を有する連結型立体保護基として、o-位連結型に加えて新たにp-位連結型立体保護基も開発し、これら置換基を有する低配位リン化合物合成について検討した。また、o-フェノキシメチル型立体保護基やメタシクロファン型立体保護基を開発し、ホスファアルケン、ジホスフェン、ジホスファアレン類および初めての非対称ジホスファブタトリエンを合成し、X線結晶構造解析を含めそれら化合物の性質に関する知見を得た。

研究成果

• [文献書誌] N.Yamada, K.Abe, K.Toyota, M.Yoshifuji: "Preparation of Sterically Protected 3,4-Bis[(2,4,6-tri-tert-butylphenyl)-phosphinidene]cyclobutene Derivatives Having Ring-Fused Structures"Organic Letters. 4. 569-572 (2002)
• [文献書誌] K.Toyota, N.Yamada, M.Yoshifuji: "Preparations of Dichloroplatinum(II) Complexes of Some Sterically Protected 3,4-Diphosphinidenecyclobutene Derivatives"Phosphorus, Sulfur, and Silicon and the Related Elements. 177. 2007 (2002)
• [文献書誌] K.Toyota, S.Kawasaki, M.Yoshifuji: "Preparation and Properties of Fluorenylidenephosphines Bearing an Electron-donating Substituent, 2-Alkoxy-4,6-di-t-butylphenyl or 2-(Alkoxymethyl)-4,6-di-t-butylphenyl"Tetrahedron Letters. 43. 7953-7959 (2002)
• [文献書誌] K.Toyota, A.Nakamura, M.Yoshifuji: "Development of a New Sterically Protecting Auxiliary of the Metacyclophane Type and Application to Unsymmetrical Diphosphenes, 1,3-Diphosphaallene and 1,4-Diphosphabutatriene"Chemical Communications. 3012-3013 (2002)
• [文献書誌] K.Toyota, S.Kawasaki, A.Nakamura, M.Yoshifuji: "Preparation and Properties of Sterically Protected Diphosphene and Fluorenylidenephosphine Bearing the 2,6-Di-t-butyl-4-methoxyphenyl Group"Chemistry Letters. 32(印刷中). (2003)