研究概要 |
今だ未知のケイ素-ケイ素三重結合(ジシリン)の合成をめざして,初年度で合成に成功したシリル置換のビスシラシシクロプロパンから1)ビストリメチルシリルアセチレンとの反応でシリル置換のビスシラシクロプロペニルの合成の試み,2)シリル置換のビスシラシクロプロパンのLi金属などによる還元反応によるジシリンのテトラアニオンの合成を試みたが,いずれも不成功に終わった。しかしながら対照化合物であるフェニル置換のビスシラシクロプロペンの合成に際して,反応条件を変えるとフェニル置換デュワーベンゼンが合成できるとことを見い出したので,最終年度では関連した研究としてこれについても研究展開を計ることにする。 一方ケイ素-ケイ素三重結合の理論的な研究として,ごく最近全電子密度のトポロジカルな理論解析,すなわちAIM計算やELF計算の報告があいついでなされた。それらの報告によるとジシリンの折れ曲がり構造はケイ素の孤立電子対の存在が原因で,その結果炭素と較べて三重結合と見なせないとのことである。本年度はこれらの理論計算の追試を行った。さらに新しい計算手法を模索しながら最終年度に理論計算も継続する。
|