研究概要 |
本研究は有機結晶の特性を利用した新規不斉合成の開発と反応機構の解明を目的とし,今までの概念をうち破る新たな新領域を開拓する。アキラルな基質が形成する不斉結晶のキラリティー情報を均一系へと誘導して光学活性物質へと導く研究と,軸不斉を有する化合物のラセミ体の混合物から,高温におけるラセミ化晶出法により,外的不斉源を用いることなくラセミ体を光学活性体へ完全分割し,さらに不斉合成への応用を視野に入れて研究している。 現在のところ,窒素原子上に嵩高い置換基を導入したアキラルな鎖状イミドが不斉結晶を形成し,そのキラリティーが低温で溶解後も長時間保持していることを見出した。その分子配座を利用して,光反応による光学活性オキセタンの合成やブチルリチウムとの付加反応,水素化試薬による還元反応により,高光学純度での生成物の合成に成功した。 さらに,常温では軸不斉を有するが高温では容易にラセミ化する軸不斉化合物を構築し,高温におけるラセミ化晶出法を試みた。種々の1-アリールピリミジノンが高い確率でコングロマレートを与えることを見出した。170℃での結晶化により,80%ee以上の光学純度での完全分割に成功した。さらに,この光学活性体を用いて水素化試薬との反応による還元体の合成や光反応により,さらなる不斉合成を展開することに成功した。
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