研究概要 |
今年度は,昨年度に合成が行われた非平面性の程度が異なるそ種々の拡張キノン類に対して光スイッチング機能を検討するとともに,アセナフテンキノン,フェナントレンキノンを基本骨格とした拡張o-キノン分子を合成した. 1-メチルアントラキノン,1,4-ジメチルアントラキノン,1,2-ジメトキシアントラキノン,1,4-ジメトキシアントラキノン,1,5-ジメトキシアントラキノン,1,8-ジメトキシアントラキノン,2,6-ジメトキシアントラキノン,ベンズ[a]アントラセン-7,12-ジオン,5,12-ナフタセンキノンから得られるターキノン類(順にターキノン1-9とする)に対して500Wキセノンランプによる光照射を行い,ESRスペクトルによるジラジカル種の生成を調べた.7,8においては無置換体と同様の光異性化反応が観測されたが,ぺリ位に二つの置換基を有する2,4においては観測されなかった.しかしながら1,8-置換体6はペリ位に置換基を有するにもかかわらず,光照射によりジラジカルが生成し,しかもそのジラジカルは光照射を止めても数時間以上安定に存在することを見いだした.またこのジラジカルは加熱により直ちに消失した.このジラジカル種の長寿命化ならびに加熱による消失は,分子スイッチング機能の研究において重要な知見であり,いわゆる「書き込み-消去」ができることに相当する. さらに,アセナフテンキノン,フェナントレンキノンを骨格に持つ拡張o-キノン系分子(10および11)を合成した.10は濃紫色,11は橙色の結晶で,11の環外二重結合は室温でも回転している.また還元電位の測定において,10は一電子二段階の可逆な酸化還元波が観測され,比較的リジッドな構造が示唆されるが,11は顕著な温度依存性を示し,11の中央六員環はかなりフレキシビリティーが高いことが推測され,そのスイッチング機能を検討中である.
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