研究概要 |
1 酸素雰囲気下、9,10-ジシアノアントラセン(DCA)を増感剤としたベンゾフェノンオキシムエーテル類の光誘起電子移動(PET)反応は、炭素-窒素二重結合の異性化を起こした。その際、一方のアリールが強い電子供与性基、他方をp-メチルフェニルとした場合、オキシムエーテル類はZ体に大きく偏よった光定常状態比(PSS_<E/Z>)を示した。本研究では、以下の知見からディストニックラジカルカチオン(DRC)が重要な中間体であることを明らかにした。 (1)前駆体オキシムは、分別再結晶によりある程度EおよびZ体を分離できた。これをさらにO-アルキル化して60〜90%純度の各々の試料を得た。 (2)これらを上記反応条件下光照射したところ、双方向異性化の挙動を示した。特にE/Z(=1/1)混合物で片道異性化とみなした系も、PSS_<E/Z>=0.04の双方向異性化と判断された。この特異な光定常状態比を示す場合、p-メチルフェニル基の存在が重要だった。 (3)そこでこの置換基を有したオキシムエーテルラジカルカチオン類の半経験的分子軌道計算を実施した。その結果中性分子の構造に基づいて最適化されたラジカルカチオンより、p-メチルフェニル基をベンジルラジカルとした構造を有するラジカルカチオンの方が生成熱において有利であった。この中間体生成には、ラジカルカチオン状態での水素ラジカル移動を要する。 (4)前項の水素ラジカル移動を確認する目的で、p-メチル-d_3置換体を合成し、光反応における重水素効果について検討した。一次の重水素効果が認められ、こうして生成したラジカルカチオン種がまさにDRCと考えられる。 2 2-フェニルインドール-1-オキシドのPET反応を検討した。脱離した酸素は、基質自身によりヒドロキシ基として捕捉された。この脱酸素化反応では、原子状酸素が脱離したと考えられる。
|