研究概要 |
光増感電子移動(PET)による,1,1-ジ置換ベンゾフェノンオキシムO-メチルエーテルのC=N結合における片道異性化挙動について,ディストニックカチオンラジカル(分離型カチオンラジカル)の生成を提案した.本研究では,その考えを検証するため,C=N結合の塩基性N原子に拮抗しうるベンゼン環上N原子を有する1-(p-ジメチルアミノ)-1-(p-メチルアミノ)ベンゾフェノンオキシムO-メチルエーテル(1)の反応性を研究した.化合物1のアリール基の置換形式から光反応は片道異性化を期待したが,実際は双方向異性化であった.鍵中間体のカチオンラジカルについて非経験的方法(ab initio法)では,1のアミン窒素への水素ラジカル付加体(1-AmH)も1のイミン窒素への水素ラジカル付加体と同程度の安定性を有することが示唆された.観察された反応性は,こうした1-AmHの関与によるのではないかと考察した. またカチオンラジカルの生成を経て,活性酸素種を生成すると期待して,2-フェニル-3H-インドール1-オキシド(2)の光反応を検討した.直接光反応(>280nm)のUV-VISスペクトルによる検討では,スペクトルは等吸収点をもって減衰し,新たに260nm付近に吸収の増加を認めた.このベンゼノイド吸収帯から,脱酸素化による2-フェニルインドール(3)の生成を推定している.ニトロンでは,まれな例としてπ-π^*三重項からの脱酸素化が知られている.他方,2のPET反応のUV-VISスペクトル追跡では,480nm付近の吸収の増大が認められた.この現象に対し,原子価異性化によるオキサジリジンの生成を経て,未だ知られていないカルボニルイミンの生成を推定した.
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