研究概要 |
本研究ではCIEEL(Chemically Initiated Electron Exchange Luminescence)型発光基質であり、すでに熱安定性に優れることを見出している1,2-ジオキセタン骨格、1-aryl-5-t-butyl-4,4-dimethyl-2,6,7-trioxabicyclo[3.2.0]heputane(1)の電子供与性基であるアリール基を、今までの知見を基に種々変換することで長波長発光を示す新規化学発光基質の創出を行った。ヘテロ環を含む縮環系芳香環の導入では、ベンゾ-チアゾール環を有するジオキセタンが最大発光波長(λ_<max>)730nmと深紅色発光を示すことが分かった。1の1位アリール基として、4あるいは5位に芳香環を有する3-オキシフェニル基を導入したジオキセタンを合成したところ、3-オキシフェニル基のみの発光に比較して導入した置換基により60nm程度長波長シフトすることが分かった。なおこれらのジオキセタンの中に、生化学分析系で重要となる水系溶媒中でも極めて高い発光効率を示す発光基質が見いだされた。また、1を含むCIEEL型発光基質ではオキシ芳香族エステルがその発光種としてもっぱら検討されてきたが、1の1位と5位の置換様式を逆にし、オキシ芳香族ケトンが発光種となるジオキセタンを合成したところ、対応するエステル体に比較して80nm程度長波長シフトすることが分かり、λ_<max>=642nmの赤色発光を示す発光基質が得られた。また新たにベンジル型アニオンを利用した発光基質の検討を行ったところ、λ_<max>=702nmの深紅発光を示す発光基質が得られた。
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