アルキルコバロキシム錯体は液相では酸素存在下可視光の照射などにより、コバルト-炭素結合への酸素挿入反応が起こることが知られているが、固相ではそのような報告はほとんど無かった。筆者の昨年までの検討により、平面配位子として嵩高いジフェニルグリオキシムを導入した(a^^^-アリルオキシエチル)(ベンジルアミン)ビス(ジフェニルグリオキシマート)コバルト(III)錯体に固相で可視光を照射すると、a^^^置換エチルからa^^'置換エチル基への異性化とともに、コバルト-炭素結合へ酸素が挿入した生成物が得られることなどを報告してきた。 これらの結果を受けて今年は昨年に引き続き、アリルオキシエチル基以外のアルキル基でも固相酸素挿入反応が進行するかどうか検討するとともに、a^^^位のエーテル酸素の必要性、反応基上の置換基の違いによる反応性の違いなどを調べるため、a^^~-フェニルプロピル、a^^^-フェニルエチル、a^^^-フェノキシエチル、a^^^-メトキシカルボニルエチル、a^^^-シアノエチル基など様々な反応基を有し、軸配位子としてはピリジン類やベンジルアミン、ブチルアミンが配位したジフェニルグリオキシム錯体を合成した。これらの錯体について空気存在下、固相光反応をおこなったところ、a^^~-フェニルプロピル、a^^^-フェニルエチル、β-フェノキシエチル錯体では、軸配位子にブチルアミンが配位した錯体以外では、5時間の光照射により酸素挿入反応が進行し、21%〜71%で酸素挿入錯体が得られた。(a^^^-メトキシカルボニル)エチル錯体では、軸配位子がピリジン類の場合はわずかに反応は進行し、酸素挿入錯体が光照射5時間で4〜14%得られたが、軸配位子がアルキルアミンの場合は全く進行しなかった。a^^^-シアノエチル錯体では、他の系列では高い反応性を示したピリジン配位錯体ですら反応は全く進行しなかった。この様に、本反応においては、反応基上のa^^^位のエーテル酸素は必要不可欠でないこと、反応基上の置換基は、a^^^位、a^^~位どちらでも良いこと、また、フェニル基などある程度の嵩高さが必要なこと、などがあきらかになってきた。
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