研究概要 |
固相合成は、溶媒に不溶なポリスチレン樹脂に基質を担持し、数段階の有機反応を行ったのちに固相担体から生成物を切り出し、目的化合物を得る新しい合成手法である。固相合成は反応操作が簡便になる反面、反応性の低下や生成物の同定の難しさなどの問題点がある。本研究は金属微粒子の表面にチオールを介して生成する自己組織化単分子膜(SAM)の表面が均一に並んでいることに着目し、新たな固相反応場として利用することを検討した。 末端にメチル基、水酸基、エステル基を持つアルカンチオール化合物を合成し、チオールの担持した金微粒子の合成を行った。アルカンチオールと塩化金をトルエンー水の二層系溶媒中、NaBH4で処理することにより金微粒子への担持を行った。得られた金微粒子のNMR, IR測定を行い、非破壊的に生成物の同定が行えることを明らかにした。また、末端の官能基の違いにより、金微粒子が分散、凝集する溶媒が異なることがわかった。このことから末端の官能基を変えることにより、金微粒子の性質を簡便に制御できることが明らかになった。さらに、Fmoc基を有するチオール化合物を合成し、金微粒子への担持量を測定したところ、従来のポリスチレン樹脂と遜色のない担持量が得られ、金微粒子が固相反応場として有用であることを明らかにした。
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